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神と人のはざまに生きる―近代都市の女性巫者


神と人のはざまに生きる


「神と人のはざまに生きる―近代都市の女性巫者」 アンヌ・ブッシィ


この作品は20世紀初頭から平成の初めまで生きた、中井シゲノというオダイ(巫者)の語りを記録したもので、作者はフランス国立極東学院教授で、日本の民俗学、修験道の研究者であるアンヌ・ブッシィ。
もともとはフランス語で発表された研究書で、逆翻訳されたものらしい。

事故で視力を失ったシゲノは、ある日「白高」と名乗るお狐様の託宣を受ける。
そして夢で見せられた場所を探し求めて単身大阪に赴き、天王寺の安居神社の一角にてお告げの場所を見つけ、その場を拠点に信仰を深めていく。
もう初っ端から日本昔話の世界だけど、昭和初期のことである。
そして、お告げ云々よりも驚くのは、何のパックグラウンドもなく、いきなり現れたシゲノの言葉を信じ、シゲノを受け入れて様々な援助を行った安居神社の神職や氏子さんたちである。
それだけ日本が大らかだったのか、それとも信仰の世界にはありがちのことなのか・・・
あまりにも無縁なので分からない。

この作品は学術書としての記述も多いが、ほとんどはシゲノ自身の言葉を記録したもので、
読み物として非常に面白い。
神の託宣を受ける力を身につけたシゲノは多くの信者から慕われ、やがて宗教団体として伏見稲荷に認められる。
しかしシゲノ自身が団体を大きくすることには全く頓着せず、水行、滝行にあけくれ、純粋に信仰の道を歩み続け、信者と直接語り合って悩める人々を導いていく。
シゲノの死後、団体は自然消滅的に解体してくことになるが、それは人のいなくなった都市が風化していくような寂寥感を感じずにはいられない。
あまたある新興宗教も同じように生まれては消えて行ったりしてるんやろか。。。
いずれにせよ、あまりにも宗教性とは無縁の人生を送っているので、こんな世界が今の時代にも存在しているのかと驚くばかりである。

ちなみにシゲノの語りの中には「宙に浮いた」だの、「神のお告げで病気を治した」みたいな眉をひそめたくなるような言葉も多々出てくる。
アンヌ・ブッシイはそれをどう思いながら聞いてただろうと思わずにはいられないが、作者はシゲノの言葉を淡々と記録しているだけである。
こんな神がかりな人物を前に、自分のことや家族の悩みを聞いたりしなかったんやろか。
単純な好奇心でオカルトの世界をのぞいてみたいと思わんかったんやろか・・・

本書には稲荷信仰に関する記述も多く、伏見稲荷のことも詳しく書かれていて、伏見稲荷大好きなねこやにとっては一粒で二度おいしかったです。
ただ、学術書なので本そのものがめちゃ高い!
そんなわけでねこやは図書館で借りました。


ところで、知らない内にエキサイトの編集画面が変わってて、知らん機能もいっぱいで恐ろしく使いにくい(><)
この記事仕上げるまでに、何度キレそうになったか!!!



by nekoya_cafe | 2015-01-17 14:51 | ブックカフェ・民俗学

自家焙煎と読んだ本あれこれ


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